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世界を広げた分、ある局面では最短距離ではないかもしれませんが、あとになって考えれば、これが一番合理的だったと、本人たちは感じるようです。大人は「最短距離」がベストだと思って誘導したくなりますが、子供にとってはそれが必ずしもベストな道筋ではありません。

たとえば、私が教えている駿台予備学校のデータで、「5教科受験の生徒」と「3教科受験の生徒」の「3教科の成績」を比べると、「5教科受験の生徒」のほうがよい。本当は教科を絞ったほうが成績は上のはずですが、結果は逆になっています。

教科同士はちゃんとリンクしていて、ある教科がほかの教科に対して「有効性ゼロ」ということはない。まるで関係なさそうな分野でも共通因子が潜んでいるのです。

戦略的に教科を絞ることはオーケーですが、しかたなく絞るのはダメ。もし迷ったら、5教科を勉強したほうが結果はついてきます。

効率を考えて、試験の傾向に合った勉強をすることもまた、逆効果につながります。典型的なのはセンター試験。

センター試験は選択式なので、センター試験に特化した勉強を重ねると、「答えを選ぶ」ようになり、自分で「答えを作り出す」ことができなくなってしまうのです。

成績優秀な生徒たちは、センター試験の現代文問題を、自分で答えを書くとしたらどうするかという姿勢で解いています。選択肢同士を比べて答えを出すというテクニックは使っていない。むしろ、面倒なことをやっています。

東大文系受験者は数IIIを学ぶ必要はないのですが、勉強している子のほうが成績がいい。困難を抱える子のほうが伸びるのです。

つまり、子供はさまざまなもの、あらゆることを抱えるほうがいい。抱えられるときに抱えられるだけ抱える。抱えることをいとわないことが大事なのです。しようがなく抱えるのではなく、平然と抱えるのがいい。抱えることでしか、ゴロンとした学力は身につかないのです。

伊勢谷:僕がいつも掲げている言葉で、色んなとこで言っているんで見たことある人もたくさんいると思うんですけど。

堀:挫折禁止!

伊勢谷:挫折禁止です。

堀:その心は?

伊勢谷:たとえば「歌を歌いたいな」と僕が思ったとして、僕そんなに歌うまくないんですよ。だだ、じゃあ歌を歌うっていうことがもたらす影響って何なんだろう、と考えたときに、観客がいてなんぼのもんじゃい、という話だと思うんですね。一人で歌っていていいんだったら「歌手」って呼ばないんで。だとすると、人に何かを与えたい、その内容は別に歌でなくても与えられると思うんです。

だから歌が下手だとしても、誰かに愛情を伝えたいとするんだったら、愛情を伝える方法って歌だけじゃないから、これだけ世の中には仕事がたくさんあるわけで。そういうことにちゃんと転換できることが大事なんだ、というふうな思いが、この「挫折禁止」には込められているんです。

堀:挫折。でもあえて、そういった考え方を「挫折」っていう表現にしたっていうのは何故なんでしょうね?

伊勢谷:「歌を諦める」っていうじゃないですか。「私は歌を諦めて、普通の仕事、やりたくない仕事をしている」とかにながちなんですけど。そうじゃないよ、と。そうじゃなくて、挫折そのものじゃなくて「別のこと」っていうのを発見していくための、最初に踏まなくちゃいけない、ある種の自分を発見するための失敗なんですよね。失敗じゃないな。自分の発見でしかないんですけど。

堀:経験の積み上げ、みたいなもの。

伊勢谷:はい。おっしゃるとおりで。だけど世の中、それ「挫折」って言ったりするんですよね。

堀:言いますね。うん。

伊勢谷:だからそれはちょっと違うよっていう。「そこで終わらせんなよ」っていう。

堀:なるほどね。そこで終わったら挫折。終わるなと。

伊勢谷:そうですね。終わらないんです。

堀:1回目のコケでしかなくて、次のがあるだろうと。なるほど。

まず、僕はどういう風になりたいの、って考えたときに、もうすごい単純なんですけど、「色んな人に好かれたい」とか「仲間がいっぱい欲しい」みたいな、誰もが考える普通のことを思ったんです。そこから始まって考えていくときに、じゃあ、誰からも否定されない「目的」っていうのを持ちたいなと。

それって誰からも否定されない、全人類が「それは正しいよ」と言えることですよね。つまり人類が地球に生き残るためのこと。その行動をしている人になりたい、って考えたんです。

もともと日本の経営の中心にあったのは「たとえ最小の結果しか見えなくても、最大の努力を惜しまない」という商人の魂。

何百年と綿々と受け継がれてきたあえて効率を求めないという日本的経営ともいうべき思想が、アメリカからやってきた「最小の努力で最大の結果を得る」レバレッジ思想により、あっという間に席巻され、多くの経営者の心から失われてしまった…

経営理念にレバレッジの考え方を持ち込むのは絶対に良くない。これは昔も今も変わらない高野氏の持論だそうだ。